城北法律事務所 ニュース No.84(2021.8.1)

目次

入管法改正案廃案
難民認定申請者への適正手続きの保障こそ必要

弁護士 結城 祐

借地や借家の場合、更新の度に、更新料の支払いで悩んでいる人も多いかもしれません。また、この更新料について、毎月の賃料とは違って、なぜ払わないといけないのか、疑問に思う人もいるかもしれません。

この更新料について、最高裁判所は、契約書などの書面に更新料の記載がない場合、賃借人が更新料を支払う法的義務はないと判示しています(1976年10月1日判決)。つまり、文書で更新料の約束をしていなければ、裁判をされても、裁判所は、更新料を支払えとは言わないし、そもそも更新料を支払う法的義務がないので、更新料を支払わなくても、裁判所は、出て行けとは言わないということです。

今回、ご紹介するのは、借地について、さらに進んで、書面に「相当の更新料」を支払うという記載があった場合のケースです。このケースについて、東京地方裁判所は、2020年2月27日、原告の請求を認め、前回の更新のときと同額の更新料を支払うように判示しました。しかし、東京高等裁判所は、同年7月20日、「更新料の支払請求権が具体的権利性を有するのは、それが、更新料の額を算出することができる程度の具体的基準が定められていることが必要であるところ、本件合意第3項は、その「相当の更新料」という文言が、抽象的で、裁判所において客観的に更新料の額を算出することが出来る程度の具体的基準ではないから、具体的権利性を肯定することはできない」と判示しました(なお、地主から、この判決に対する異議申し立てはなく、この判決は、確定しています。)。

この高裁判決は、一義的かつ具体的に記載された更新料条項に関し、高額に過ぎるなどの特段の事情がないかぎり、消費者契約法に反しないとした最高裁判所の2011年7月15日判決と同様、その記載を見ただけで、誰が計算しても、更新料の金額にブレがない場合でなければ、更新料を支払う必要は法的にはないと明言したものです。つまり、「相当の更新料」だけでなく、「相応の更新料」や「相場の更新料」、「路線価を基準にした更新料」という記載も、見た人によって、金額にブレが出るので、同様に、更新料を支払う必要はありません。

この判決を受け、ご自身の契約書に、誰が見てもブレない金額の更新料の定めがあるかを確認し、そういう定めがなければ、更新料を支払わないという選択肢を検討することをお勧めします。