城北法律事務所 ニュース No.84(2021.8.1)
目次
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- 1 改正憲法改正手続法が成立~公正・公平な国民投票実施にはまだ大きな問題が残る~
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- 1 立ち上がって声を上げる人々‥‥大震災と福島第一事故からの10年
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- 1 マンション管理のご相談はいかがでしょうか
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- 1 入管法改正案廃案難民認定申請者への適正手続きの保障こそ必要
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- 1 ご注意「働き方改革」2023年4月から中小業者も1か月60時間超の時間外労働の割増率が50%に
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- 1 <事件報告>訴訟の現場をゆく ~第2回・赤羽編~
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- 1 <事件報告>建設アスベスト訴訟~13年の激闘の末、最高裁で勝訴!政策転換へ!!~判決をてこに国の被害補償制度を創設 一方課題も~
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- 1 <事件報告>全国B型肝炎訴訟で最高裁逆転判決~最初の発症から一定期間が経過した被害者の権利救済に道~
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- 1 <事件報告>無拠出の障害年金の逸失利益性障害者が交通事故で死亡「もらえたはずの障害年金は損害にならない」でよいのか
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- 1 弁護士に聞きたいどうして弁護士になったの?
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- 1 <法律相談>会社が倒産しても経営者(保証人)は破産しなくてもすむ場合があります~『経営者保証ガイドライン』の利用について~
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- 1 普通賃貸借契約から定期賃貸借契約への変更要求を断れるか~大家さんから定期賃貸借契約への変更を迫られています~
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- 1 所員からのひとこと
<事件報告>建設アスベスト訴訟~13年の激闘の末、最高裁で勝訴!政策転換へ!!
~判決をてこに国の被害補償制度を創設 一方課題も~
弁護士 松田 耕平
前号でお知らせしたように、これまで13年以上もの長きにわたり闘ってきた建設アスベスト訴訟について、国との関係では昨年12月に国の責任を認めた東京高裁判決が最高裁決定により確定しました。そして去る5月17日、建材企業との関係でも判決があり、基本的にこちらの主張を受け容れる原告勝訴の判決が出ました。アスベスト建材の市場占有率(シェア)を要素の一つとして到達可能性を認めた点でも画期的な判決といえます。
動きは裁判だけにとどまりません。昨年12月の国の責任が確定したことを契機に、田村憲久厚労大臣から原告団へ面談・謝罪がなされ、全面解決を検討する与党プロジェクトチーム(与党PT)も結成され、原告団らが交渉を重ねた結果、最高裁判決当日、与党PTから係属中の訴訟の統一和解や建設アスベスト給付金制度(仮称)の創設等が提言されました。
この提言を受けて、翌日(5月18日)には、菅義偉総理が原告団代表らと面談し、被害者・遺族に対し、「国の違法性の判決が出たということを重く受け止め、そしてこの間、建設の石綿によって健康被害を受けられた方々の長きにわたる御負担や苦しみ、そして最愛の御家族を失った悲しみについて、察するに余りあり、言葉もありません。内閣総理大臣として責任を痛感し、そして真摯に反省して、政府を代表して皆さんに心よりおわびを申し上げます。」等と述べ、真摯な謝罪表明がなされました。
同日午後には、与党PTのとりまとめを受けたかたちで、田村厚労大臣と原告団代表らが連名で署名した「基本合意書」が取り交わされました。同書では、①最高裁判決以前に提訴された係属中の訴訟の和解についての基本方針・基準等、②最高裁判決時点において未提訴の被害者に対する補償の内容、③石綿被害発生の再発防止対策や被害者に対する補償に関する事項等について、建設アスベスト訴訟全国連絡会と継続的に協議すること等が合意されています。
そして6月9日、長い名称ですが、「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が国会で可決、成立しました。これにより、原告団が長らく求めてきた、“裁判によらないアスベスト被害の早期補償”の一端が実現する運びとなりました。
このように、昨年12月の最高裁の決定を契機に、裁判内外で状況がめまぐるしく進展するなかで、国との関係では全面解決に近い成果を実現することができました。国を相手に裁判を起こして、国の政策そのものを創り出し、或いは変換させていくという、いわゆる「政策形成訴訟」の醍醐味を感じることができた瞬間でした。
とはいえ、まだまだ課題は山積しています。給付金法では屋外工が補償対象から除外され、また、国の責任期間も限定されているのでこれを変えなければなりません。また、一番の加害者である建材企業はなおも和解や基金創設に反対しているため、まだまだ裁判が続きます。真の抜本的解決にはまだ道半ばですが、引き続き原告団・弁護団・支援が一丸となって頑張りますので、ご理解とご支援をお願いいたします。