城北法律事務所 ニュース No.86(2022.8.1)

目次

<法律相談>眠っている埋蔵金はございませんか
―預託金や出資金の返還請求―

弁護士 片木 翔一郎

1 預託金・出資金がある場合

様々な団体の会員や組合員になる際に、「預託金」や「出資金」と称して多額の金銭を預けるよう求められることがあります。典型的なのが、ゴルフクラブやリゾートクラブ、各種共同組合、信用金庫などです。こういった団体は、活動に多額の資金が必要ですので、立ち上げの際に会員や組合員となろうとする人から当面の運転資金を集めているのです。これらの金銭は大きいと一人当たり数百万円の場合もあります。

このような預託金や出資金については、多くの場合、預け入れから一定期間経過していれば、団体を脱退する際に返還請求できることが当該団体の規約に定められています。

2 実際に返還を請求してみると

しかし、このように預けた金銭について実際にいざ返してもらおうとすると、脱退を引き留められたり、何かと理由をつけて返還を先延ばしにされたり、酷い場合には特段の理由もなしに拒否されたりすることがあります。

特に、ゴルフクラブは、バブル崩壊以降、経営が大幅に厳しくなっているため、多くの会員から預託金の返還を一斉に請求されると運転資金がなくなってしまいます。従って、なかなかすんなりとは返還に応じてくれません。ゴルフクラブによっては、「預託金の返還期限延長が理事会で決議されました」などと一方的に宣言して、返してくれない場合もあります。なお、このような決議は、お金を借りた側の人が勝手に返済期限を延長するようなものですから、多くの場合、裁判所は無効と判断しています。従って、このような決議があっても返還請求できることがあります。

さて、以上のように強硬な態度で返還を拒んでくる場合でも、弁護士の交渉により、返還を受けられる場合があります。例えば、私が最近扱った事件でも、ゴルフクラブの会員になる際に預けた数百万円の預託金について、ゴルフクラブ側が返還を渋っていたところ、交渉によって無事返還されたということがありました。

3 預けた覚えがなくても

ここまでを読んで「そんなお金は預けたことないから私には関係のない話だ」と思った方であっても、亡くなった親族から相続したゴルフ会員権や組合員の地位に預託金・出資金の返還を受ける権利が含まれているなどして、知らず知らずのうちに返還請求権を取得していることがありますので注意が必要です。さらに、「死んだお父さんが生前に会員だったけど、死ぬ前に返還を受けたはずだ」というような場合にも注意が必要です。規約上、脱退時に自動的に返還されるのではなく脱退者からの請求があってはじめて返還することとなっている場合、そのことを脱退時に教えてくれなかったがために預けたままになっていることもあります。

4 相談はお早めに

なお、こういった返還請求権は、お金を預けている団体が、倒産してしまってからでは回収が困難になります。特に、経営が苦しくて倒産の可能性がある団体ほど返還には素直に応じないため、いざというときには手遅れになってしまいがちです。

こういった「埋蔵金」にお心当たりのある方は、お早めにご相談いただくことをお勧めします。