城北法律事務所 ニュースNo.87 2023新年号(2023.1.1)

<法律相談>今後のことや死後のことが心配です
~財産管理契約、任意後見制度、法定後見制度、死後事務委任契約~

弁護士 大八木 葉子

一人暮らしで親族ともお付き合いがないとおっしゃる70代のAさんが今後の財産管理や亡くなった後の葬儀、永代供養などどうしたらよいか心配になり法律相談にいらっしゃいました。

Aさん:今は体も頭もしっかりしているつもりなのですが、お金の管理などを手伝ってもらいたくなった場合、どんな方法がありますか。

弁護士:弁護士と財産管理契約を結んで弁護士が財産を管理する方法があります。
もし、判断能力が不十分になり、福祉サービス利用の申込み・契約手続き、日常的なお金の出し入れ、預金通帳の預かりなどのお手伝いをお願いしたい場合には、社会福祉協議会で日常生活自立支援事業を利用する方法もあります。

Aさん:将来、認知症になり、自分で判断できなくなってしまった場合、財産管理や福祉サービスの契約などはどうしたらいいんでしょうか。

弁護士:予めあなたが希望する事務を希望する人に代わりにしてもらえるように任意後見契約を結んでおく方法があります。

また、予め任意後見契約を結んでいなくても、判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所が判断能力に応じて成年後見人、保佐人、補助人を選任する法定後見という方法もあります。

Aさん:ところで、私が亡くなった後に預金を寄付するつもりなので遺言書を作ろうと思っています。その遺言書に、私の葬儀や永代供養について〇〇寺にお願いしたいと書けば、その通りにしていただけるでしょうか。

弁護士:葬儀や永代供養についても遺言書に書くことはできますが、付言事項といいまして、法的拘束力がありません。遺言書の記載に法的な拘束力が生じるのは法が定めた事項に限られているからです。

Aさん:そうなんですか?
それでは、葬儀や永代供養を希望通りに実現してもらうためにはどうしたらよいでしょうか。

弁護士:弁護士などと死後事務委任契約を結ぶ方法が考えられます。

Aさん:実は、葬儀や永代供養だけでなく、私が亡くなった後の家の片づけや病院への支払いなどもどうしたらよいかと心配です。その死後事務委任契約では、葬儀や永代供養のほかにも何か頼めるのでしょうか。

弁護士:関係者への死亡の連絡、病院や介護施設に対する未払料金の精算、借りていた不動産の解除や明渡し、公共料金の精算や解約、インターネットの解約、パソコンや携帯電話の個人情報の抹消処理、ペットの引渡しや施設入所などがあり得ます。そのほかに、ご遺体の引き取り、健康保険証の返還、運転免許証や旅券の返納、年金の受給資格抹消申請、住民税等の納付などもあり得ます。

もっとも、相続人の方との関係や、相続人でなくても手続きできるかどうかなど様々な難しい問題もありますので、後ほどゆっくりお話をお聞きしますね。

Aさん:今日だけでなく今後も引き続き相談にのって欲しい場合など、いい方法はありますか。

弁護士:弁護士による定期的な安否確認や相談を希望される場合には、ホームロイヤー契約を結ぶ方法もあります。