城北法律事務所 ニュースNo.88 2023夏号(2023.8.1)

<法律相談>働く人の法律相談
~バイトでよくあるトラブルQ&A~

弁護士 田村 優介

Q1【質問】求人に応募するときにチェックしなければいけない点は何ですか?

A1【回答】アルバイトは、法律的には、「雇用契約」という名前の契約です。正社員であってもアルバイトであっても、「労働基準法」をはじめとする多数の法律に守ってもらえます。

アルバイトには割増残業代はない、有給休暇はない、などという会社がありますが、これは明らかに法律違反です。労働法の基本知識を学び、身を守りつつ働きましょう!

① 時給のチェック

「最低賃金」という言葉を聞いたことがあると思います。都道府県別と産業別の定めがありますが、アルバイトの場合は主に働く都道府県の最低賃金をチェックし、下回っていないかを確認してください。東京都の2022年10月以降の最低賃金は1072円です。

② 残業代

「ウチには残業代制度はない」とか「残業代はなしの約束で採用している」などといって残業代を支払わない会社があります。

しかし、会社と雇用関係がある以上、正社員・アルバイト等の区別なく、残業には残業代が発生します(労働基準法37条)。下記の場合には使用者は割増賃金を支払わなければなりません。

ア 1日8時間もしくは1週40時間(さらに大企業の場合1ヶ月60時間)を超えて働かせた場合
イ 休日に働かせた場合
ウ 深夜(午後10時~午前5時)に働かせた場合

アルバイトの場合、1日8時間や週40時間を超えても、あるいは深夜まで働いても、通常通りの時給しか出さない、という会社もありますので、チェックが必要です。

③ 労働時間の管理

労働時間については、使用者側が1分単位で管理して、働いた分の時給をきっかり支払わなければなりません。

15分、30分単位などで管理してそれ以下の残業は切り捨て、の扱いは違法です。かつては多く見られましたが、大手飲食チェーン等が労基署から是正勧告を受け、減少傾向にあります。しかしまだまだ存在していると思われるので、チェックしてください。

Q2 求人情報と契約内容が違うとき諦めるしかないの?

A2 求人情報に時給2000円、と書いてあったのに、面接では「しばらくは1100円で、仕事を覚えたら昇給もあるから」、などと説明されることがあります。

これは通称「求人詐欺」と呼ばれることもあり、非常に不当な行為です。

しかし、面接で説明を受けて雇用契約書等に時給1100円でサインしてしまった場合、書面とおりの契約が成立したとして、後から争うことは非常に困難になります。

求人と実際の契約内容に違いがあれば、勇気をもって指摘する、採用を辞退するなど、身を守るための行動をとってほしいところです。

なお、雇用契約書などが何もなく、勝手に低い時給で給与が振り込まれたような場合には、当初の求人情報が契約内容だとして不足額を請求していくことはできると考えられます。私は、このケースで勝訴したこともあります。

Q3 ミスしたら罰金。これって仕方ないの?

A3 人間が作業を行う以上、ミスは必然的に一定の確率で発生するものです。会社は人間を使用して利益を上げるのですから、ミスによる損害は基本的に会社が負担すべきです。

労働者が通常求められるレベルの注意をはらって仕事にあたっていたのであれば、損害賠償義務はないと考えるべきで、罰金を徴収するのは違法といえます。