城北法律事務所 ニュースNo.88 2023夏号(2023.8.1)

<事件報告>犯罪被害者参加制度
犯罪被害者となった場合には、弁護士へ相談を

弁護士 湯山 花苗

  1. 被害者参加制度
    被害者参加制度は、平成19年6月の刑事訴訟法の改正によって導入され、平成20年12月1日から運用を開始しました。従前から、犯罪被害者が刑事事件に関与する手続として、刑事訴訟法292条の2に基づく心情に関する意見陳述がありましたが、刑事事件への直接的・能動的関与とはいえませんでした。そこで、法改正によって一定の重大犯罪においては、被害者本人や遺族らが公判期日に出席し、自ら証人尋問や被告人質問を行い、検察官とは別に論告・求刑をも行うことができるようになりました。
    通常、弁護士は被告人席に座り、被告人の「弁護人」として刑事事件に関与するのですが、この被害者参加制度の場合は、検察官の横に「被害者参加弁護士」として座ります。被害者自身が公判期日に出廷することもできますが、被害者参加弁護士が代わりに出頭することで、被害者自身が公判期日に出ないという選択も可能です。刑事事件の記録の閲覧謄写であったり、検察官との打ち合わせを行ったりと、犯罪被害者として刑事事件に参加する場合にはやるべきことが多いですし、検察官の権限行使・不行使について説明を受ける際には弁護士が一緒に話を聞くことで理解が増します。そのため、犯罪被害者参加をする場合は、被害者参加弁護士をつけて、刑事事件の準当事者になることをお勧めします。
  2. 損害賠償命令制度
    被害者参加制度と同時に、損害賠償命令制度が導入されました。損害賠償命令制度とは、対象犯罪について、有罪判決が言い渡された後に、判決を言い渡した刑事裁判所が引き続き損害賠償命令の申立について審理を行うものです。刑事裁判の事実認定の心証が、損害賠償命令の審理に事実上引き継がれ、原則として4回以内の期日で審理を終結しますので、簡易迅速な損害回復に寄与する制度といえます。申立手数料が2000円と安く、証拠を用意しなくとも刑事事件記録がそのまま証拠として引き継がれるため、犯罪被害者の立証の負担を軽減することができるようになりました。また、刑事事件の裁判官がそのまま担当するため、通常の民事事件と異なり、裁判官の下す判断についてある程度予測することができます。
  3. 犯罪被害者となった場合には、まず相談を
    被害者参加制度と損害賠償命令制度は、別の制度ですので、対象となる犯罪は異なりますし、被害者参加制度を利用しなくても損害賠償命令制度を利用することは可能です。
    資力がない犯罪被害者の場合は、国選被害者参加弁護士の選定手続きをすることで、被害者参加弁護士の費用を国に支払ってもらうことが可能です。また、損害賠償命令制度は民事事件の損害賠償請求訴訟を刑事裁判の手続で行うものですので、損害賠償命令制度の弁護士費用を、犯罪被害者やその家族が加入している自動車保険の弁護士特約の保険を利用して支払うことができる場合もあります。
    犯罪被害者になってしまった場合には、泣き寝入りせず、まずは弁護士にご相談ください。
    二次被害が生じないよう、十分に慎重を期して対応いたします。