城北法律事務所 ニュースNo.88 2023夏号(2023.8.1)

令和の地上げ
悪質な地上げには悩まず相談を

弁護士 種田 和敏

「地上げ」と聞くと、バブルの頃の昔話だと思う人も多いかもしれません。

しかし、去年の秋頃から、テレビや週刊誌で、「令和の地上げ」が取り上げられるようになりました。今年の4月には、NHKのクローズアップ現代で、悪質な地上げの実態が報道され、大きな反響がありました。悪質な地上げとは、例えば、賃貸ビルの出入口に生魚などを吊るしたり、借地に続く私道を人一人がやっと通れるくらいに狭めたり、借地の周りをフェンスで囲い、借りたものは返せと看板を貼ったり、賃借人を常時、監視したり、外出先まで付け回したりすることです。このような悪質な地上げは、賃借人の住む権利や営業する権利を侵害するもので、断じて許されるものではありません。

借地借家人組合という全国にネットワークを持つ団体があります。借地借家人組合は、賃借人の権利を守るため、様々な活動をしています。私は、弁護士になって3年目、2014年頃から、東京借地借家人組合連合会(東借連)の常任弁護団に所属し、悪質な地上げのご相談や対応を行っています。

首都圏では、バブル期以降で言うと、2014年から2015年にかけて、悪質な地上げがありました。不動産市場は、2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災で一時、下落・停滞しましたが、2012年からのアベノミクス以降、コロナ禍の停滞を除けば、右肩上がりです。2013年に、2020年の東京オリンピックが決まったことも、首都圏の不動産市況を活性化したようで、2014年に、値上がりを期待して、悪質な嫌がらせを伴う地上げが多発しました。私は、東借連の常任弁護団に入ってすぐ、悪質な地上げに対し、賃借人の代理人として交渉の間に入ったり、嫌がらせを差し止める仮処分を裁判所に申し立てたり、国土交通省に規制・取締りの申し入れをしたりしました。悪質な地上げの実態が新聞などで報道もされました。その甲斐もあってか、2016年以降は、悪質な地上げは下火になりました。

ただ、その後も、不動産価格は上昇を続け、コロナ禍の一時的な停滞があった場所はあったものの、首都圏の住宅地では、この10年で、総じて、価格が3割程度上昇し、場所によっては4割、5割という所もあります。そして、コロナ禍が落ち着き始めた頃に、悪質な地上げのご相談が増え始めました。

このように、不動産価格が上昇する局面において、悪質な地上げは、多く起こります。つまり、地上げは、バブルの頃の昔話ではなく、まさに今も起きているのです。

最近の悪質な地上げにも、東借連やその常任弁護団は取り組んでいます。突然、大家や地主が変わり、立退きなどを求められ、それを断ったら、嫌がらせを受けたという方は、まずは、借地借家人組合にご相談ください。城北法律事務所の近くには、城北借地借家人組合(東京都豊島区西池袋5丁目13−10、電話03−3982−7654)があります。組合の判断で、必要があれば、私も東借連の常任弁護団の一員として、ご相談や対応をします。