城北法律事務所 ニュースNo.90 2024夏号(2024.8.1)

<法律相談>
〈交通事故の法律相談 連載企画 第3回〉症状固定後 ~医師にこれ以上治療しても治らないと言われた~

弁護士 大八木 葉子

1 症状固定とは?

交通事故後、治療により症状がなくなる場合もありますが、残念ながら、医師の指示に従って治療を続けても、痛みが残っている、手や足が従前のようには動かなくなってしまった、脳の機能に障害が残ってしまった、と様々な後遺症が残る場合もあります。そんな時、医師から、これ以上治療しても治らないと言われてしまうと、どうなるのでしょうか。
これ以上治療を続けてもそれ以上症状の改善が望めない状態を「症状固定」といいます。

2 後遺障害はどのように認定されるのか

何らかの後遺症があっても、そのことだけで当然に後遺障害に基づく損害が認められるものではありません。その後遺症について後遺障害の認定が受けられるかを検討することになります。

後遺障害認定を受けるには、医師作成の後遺障害診断書を提出しますが、自動車事故の場合、その後の手続きとしては大きく2つの方法があります。事故の相手方が任意保険に加入している場合、その任意保険会社に申請を任せる方法、反対に、被害者が自分で書類や資料を準備して手続きを行う「被害者請求」という方法もあります。
このような手続きを経た後、後遺障害について、最も重い1級から軽い14級、あるいは、後遺障害に該当しない「非該当」との結果が届きます。
この結果に納得した場合には、次の3に記載する内容の損害を計算して請求しますが、結果に納得できない場合には、異議申立てを行う他、紛争処理制度を利用したり、訴訟を起こすことも検討します。

次に述べますように、後遺障害の等級により、損害額が大きく違ってきますので、後遺障害の認定は重要です。

3 症状固定後の損害としては、どんな請求ができるか

交通事故で怪我をした場合を前提に説明しますと、次のような損害の請求が可能です。

(1)症状固定前

治療費・入院した場合の入院雑費・入通院の際の交通費・休業損害・傷害慰謝料(入通院慰謝料)の他、一定の場合、整骨院や鍼灸院等での施術費用や入通院の際の付添費、付添人の交通費などが認められることがあります。

(2)症状固定後

治療費については、原則として症状固定後は認められなくなります(例外もあります)。

後遺障害が残ってしまい、もともと100%あった働く能力が制限されてしまったことによって生じる将来の収入減については後遺症による逸失利益が認められます。後遺障害の1~14級に応じて制限される能力割合の基準があり(労働能力喪失率といいまして、最も重い1級の場合は100%、最も軽い14級の場合は5%です)、これをもとに収入減分を算出します。
また、その後遺障害の程度に応じて後遺症慰謝料が認められます。この慰謝料についても、基本的に、後遺障害の1~14級に応じた慰謝料額の基準があります。後遺障害として非該当とされた場合でも、慰謝料が認められる事案もあります。さらに、重度の後遺障害の場合には、近親者に本人とは別途の慰謝料請求権が認められることもあります。

損害賠償に際しては、後遺障害の認定、損害額の算定・交渉、過失割合等いろいろ問題となる点もありますので、お気軽に弁護士にご相談ください。