城北法律事務所 ニュースNo.91 2025新年号(2025.1.1)

事件報告

弁護士 久保木 太一

補助26号線事業認可取消訴訟の上告棄却について

1 昨年6月14日、板橋区の特定整備路線補助26号線事業認可取消を巡る裁判で、最高裁判所第二小法廷は、本件の上告を棄却し、本件を上告審として受理しない決定を下しました。

2 原告団は、原告らの請求を棄却する第一審判決、控訴審判決を受けて、一昨年11月、上告人38名での上告提起、上告受理申立を行っており、第一審以来、当事務所の弁護士が中心となって弁護団を組織していました。
弁護団が作成した上告理由書では、控訴審で新たに提出した岩見良太郎埼玉大学名誉教授の意見書で詳細に論じられているとおり、補助26号線の事業認可には公共性がなく、憲法29条が定める財産権を侵害することであることなどを指摘し、控訴審判決が破棄されるべきであることを述べていました。

また、昨年4月18日には、原告団のメンバー3名と弁護団の弁護士4名とで最高裁判所に対して要請を行い、補助26号線がハッピーロード大山商店街に与える甚大な被害などに関して切実な訴えを行いました。私も、終戦後すぐに作成されたのち70年間以上眠っていた道路計画が、長い年月の中で発展してきた商店街や人の暮らしを破壊することがいかに不合理かということを述べさせていただきました。
それにもかかわらず、最高裁判所第二小法廷は、実質的な判断を行わず、定型的な文言によって上告棄却・上告不受理決定を行い、大いに失望をしました。

3 補助26号線を巡る闘いは、これまで裁判闘争と市民運動とが両輪として動くことで進められていきました。その成果として、道路敷地の収用は遅々として進んでおらず、道路が完成する見込みは未だ見えていません。

2015年8月より約9年間続いた裁判がこのような形で終わってしまったことは残念なことではありますが、多くの原告が集い、弁護団と一致団結して闘争を続けられたことには重要な意義があり、また、前述のとおり、一定の成果も出ています。

裁判による事業認可の取消は叶わなかったものの、東京都・板橋区が目指す、商店街を破壊する道路建設、それに伴う高層ビル建設を中心とした再開発を阻止するための闘いは終わっていません。むしろ、道路建設・再開発に反対する商店街利用者等の声は日に日に増しています。板橋区内では、補助26号線以外にも多くの街壊しが企図されており、各地で反対運動が巻き起こっています。

弁護団・原告団は解散となりましたが、私たちは今後も運動体の一員として、道路建設・再開発に反対し続けるとともに、強制的な土地収用に抵抗するための法的な闘いに全力を尽くす所存です。