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城北法律事務所 ニュース No.76(2017.8.1)| 城北法律事務所

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城北法律事務所 ニュース No.76(2017.8.1)

城北法律事務所 ニュース No.76(2017.8.1)4P

貸借名義人が亡くなった 住み続けることはできますか?

弁護士 深山麻美子

Q1 夫と私、中学生の娘の3人で、借家暮らしをしていましたが、突然夫が亡くなってしまいました。家主から、契約名義人である夫が死亡したのだから出て行くように迫られることはありませんか? また、私が家主と新たな賃貸借契約を結ばなければなりませんか?

Α1 夫名義の賃借権は、妻であるあなたと娘さんが、そのままの契約内容で相続しますので出て行く義務はありません。また、新たな賃貸借契約を家主と結ぶ必要もありません。

Q2 実は、夫と私は婚姻届を出していません。娘も私の連れ子で、夫と養子縁組はしていません。ただ、長年事実上の夫婦・親子として暮らしてきました。こういう場合、賃借権を相続できませんか。

Α2 内縁の妻や、亡夫と養子縁組をしていないあなたの連れ子は、亡夫の相続人にはなれません。ただ、亡夫に相続人がいない場合は、事実上、夫婦や親子同様の関係があった同居者は、亡夫の賃借人の権利・義務を承継できます(借地借家法36条)。

Q3 夫には、すいぶん昔に亡くなった奥さんとの間に成人した息子が一人います。この場合はどうなりますか。

Α3 その息子さんが亡夫の賃借権を相続しますので、あなたと娘さんは賃借権を承継できないことになります。

Q4 では、家主が、私と子どもに出て行くように言った場合は、出て行かなくてはならないということですか?

Α4 判例は、内縁の妻や事実上の養子が、相続人の賃借権を援用して家主からの明渡を拒否できるとしています。

Q5 この息子は自分の家がすでにあり、賃料を滞納して家主から解除されてしまったり、家主と合意解除してしまうのではないかと心配です。

Α5 確かに賃貸借契約が解除されてしまうと、援用する賃借権自体がなくなることになってしまいます。亡夫の息子としても住む必要のない借家の賃料を支払いたくないのも無理からぬところです。息子と相談して、息子から賃借権の譲渡や転貸をしてもらったり、賃料はあなたが支払う取り決めをして解除を防ぐ手立てを考えた方がいいでしょう。

 また、合意解除については、信義誠実の原則に反しないような特段の事由がなければ内縁の妻に解除を対抗できないとした判例もありますので、諦めずに弁護士に相談して下さい。


貸借物件の雨漏りを大家が直してくれない 修理はどうしたら良いですか?

弁護士 野口景子

Q1 借りているアパートで雨漏りが続き、大家さんに修理をお願いしましたが修理してくれません。梅雨は明けてもゲリラ豪雨や台風が増える時期なのに…。自分で修理するしかないのでしょうか。

Α1 結論から言うと、そんなことをする必要はありません。大家さんは、アパートの雨漏りを修繕する義務があります。

 アパートを借りるのは「賃貸借契約」の一種です。賃貸借契約では、借主は貸主の物を使ったり、その物から利益を得ることができ、その対価として、貸主にお金を支払います。賃貸借契約では、借主が物を使用したり、その物から利益を得たりするために必要な修繕は貸主の義務です。このように貸し借りされている物を目的どおりに使用するための保存や修繕にかかる費用を「必要費」と言います。

 アパートの住人(借主)は大家さん(貸主)からアパートの一室を借り、住居として使用し、その対価として毎月家賃を支払っています。大家さんは、住人がアパートで「住む」という目的を達成するために必要な、つまり、アパートを住居として使用するために必要な修繕をする義務を負うのです。

 自宅の雨漏りを放置していては、家具が濡れて痛んだり、カビが発生し易くなるなどして、とても住み続けることはできません。大家さんは雨漏りが発生した場合には費用を負担して修繕する義務を負います。

Q2 何度頼んでも大家さんが雨漏りの修理してくれません。このままでは家中が水浸しです。

Α2 そのようなときには、住人自ら業者に依頼して雨漏りの修繕を行わざるを得ません。

 この場合、実際に負担した費用については大家さんに請求することができます。住人自ら業者に依頼して修繕した場合には、修繕する前の雨漏りの状況を写真撮影し、工事の見積書と領収証は必ず保管しておいてください。修繕工事が必要であったことや、行われた修繕工事がアパートに住み続けるために必要なものであったこと、住人が立て替えた金額の証拠となります。

Q3 大家さんは「賃貸借契約書に『必要費は借主の負担とする』との特約があるから、雨漏りの修理は自分でやってくれ」と言っています。特約があれば借主負担なのでしょうか。

Α3 現在の実務では、大規模な修繕については特約があっても借主に費用を負担させることはできないとしています(なお、消費者契約法が適用される賃貸借契約では、小規模な修繕についても借主負担とすることはできないとされています)。

 雨漏りの修繕は、屋根、柱や梁などにも手を加える必要が生じることもあり、小規模な修繕とはいえず、特約があっても修繕費用は貸主負担となると思われます。「必要費は借主負担」との特約があっても諦めず、特約が適用される修繕なのかどうか検討することが大切です。


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