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城北法律事務所 ニュース No.76(2017.8.1) | 城北法律事務所

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城北法律事務所 ニュース No.76(2017.8.1)

城北法律事務所 ニュース No.76(2017.8.1)5P

なぜ犯罪者の味方なの? 刑事事件の弁護について

弁護士 工藤裕之

 1 刑事事件というと、ほとんどの人は自分に関係はなく、悪いことをした人たちだけの問題だと考えるのではないでしょうか。

 しかし、決してそうではないのです。比較的新しいところでは、東京電力女性社員殺人事件、布川事件、足利事件などの再審無罪事件がありますし、かなり以前にも、免田事件や財田川事件などの死刑事件でも再審無罪になった事件もあります。

 また、痴漢冤罪での無罪判決も数多く出されているのです。無実の人たちが罪に問われている現実をしっかりと看る必要があります。

 ここでは、身に覚えのない犯罪に巻き込まれてしまった場合と実際に犯罪を犯した場合に分けて述べたいと思います。

2 ふだん普通の日常生活をおくっている人が、万が一、やってもいない犯罪の嫌疑をかけられて警察に逮捕されたらどうしたらよいでしょうか。

 最も大事なことは、余計なことは言わずに、「やっていない」と否認することです。その上で、知り合いの弁護士がいない場合には、直ちに、当番弁護士を呼んでほしいと警察の留置場の担当者に言ってください。不安があれば、弁護士と面会するまで、刑事からどんな怒鳴られても何も言わなくて構いません。この場合は「黙秘します」とだけ言ってください。

 ただし、痴漢事件で迷惑防止条例違反であれば、現在ではちゃんと仕事をしている場合などには、否認しても、逮捕に引き続く勾留がされないことが多いのです。

 また、現在では勾留状が発付されて以降は、ほとんどの犯罪について、被疑者国選の制度が認められていることも知っておいた方がいいと思います。

3 他方において、実際に犯罪を犯して逮捕された場合であっても、余計なことは言わずに、必ず弁護士と接見して、その後の対応を相談してください。行ったこと以上に悪人にされるいわれは、まったくないのです。

 犯罪を犯した場合に、刑事弁護をする意味は、どこまで犯罪に関与しているのかが明白ではないことも多く、何から何まで非難されるいわれはないからです。

 被疑者、被告人にとって、有利な事実なり情状なりが必ずあるはずであり、これらを取り上げて弁護する立場の人がどうしても必要だと考えられます。あらかじめ、どのような犯罪にどの程度関与したかは明らかなのではなく、裁判の中で明らかにする必要があるのです。

 少し考えてみてください。何か罪を犯したとされた場合に、まともな刑事手続を経ず、弁護も、公開の裁判も受けられずに、闇から闇に葬られるような制度をよしとすれば、それはまさに暗黒国家であり、およそ民主主義国家ではあり得ないものです。

 厳罰化、必罰化の傾向が強まっている現在だからこそ、いかなる事件であれ、より一層刑事弁護の必要性は大きくなっていると言えるのではないでしょうか。


裁判員裁判で変わったの? 導入後8年が経過して

弁護士 松田耕平

 裁判員裁判が日本の刑事裁判手続に導入されたのは2009年5月ですから、すでに8年が経過したことになります。最高裁判所の統計資料によれば、この間に選任された裁判員は5万4964人にのぼるそうです(2016年12月末時点)。

 そもそも裁判員裁判とはどのような制度かというと、「国民のみなさんに裁判員として刑事裁判に参加してもらい、被告人が有罪かどうか、有罪の場合どのような刑にするかを裁判官と一緒に決めてもらう制度」で、導入した趣旨は「国民のみなさんが刑事裁判に参加することにより、裁判が身近で分かりやすいものとなり、司法に対する国民のみなさんの信頼の向上につなげることと言われています(最高裁判所ホームページ)。

 このように裁判員裁判は、職業裁判官ではない一般の方々が裁判員として刑事手続に参加するため、弁護人と検察官は職業裁判官だけでなく一般の方々を説得しなければなりません。このため、弁護人・検察官はともに、言い分(主張)を〝より簡潔に、分かりやすく伝える〟ことを意識した法廷活動を行うようになりました。従来の書面読み上げ中心の訴訟活動ではなく、会議でのプレゼンのようにパワーポイントが使用されるようになったのもこのためです。また、裁判員の負担を考慮して、従来の刑事裁判と比較して、法廷が開かれる期間も大幅に短くなり(平均実審理期間は7.0日、開廷数は4.3回)、短期間に集中して審理が行われるようになりました(ただし、法廷を開くための準備期間には相当時間がかかります)。

 裁判手続としては大きな変化が見られますが、判決の中身はどうでしょうか。「裁判員裁判実施状況の検証報告書」(2012年12月)によれば、殺人既遂、傷害致死、(準)強姦致傷、強盗致傷など人の生命や性的自由に対する犯罪については、職業裁判官による判決よりも重い刑が言い渡される傾向にあるとされています。しかし、一方では、保護観察付きの執行猶予判決も多くなっています(職業裁判官時は35.8%→裁判員裁判では55.7%)。このように、裁判員裁判では重い方にも軽い方にも判決(量刑)の幅が広がっていることから、職業裁判官よりも、それぞれの事件に見られる事情をより詳細に拾い出した判決となっているのではないかという見方もあります。

 こうしてみると裁判員裁判は順調にも思われますが、課題も多く残されています。人の人生を左右するという心理的負担が重いことから、近年実施されたアンケートでは、8割以上の人が裁判員裁判に参加したくないと回答しています。そして実際にも、裁判所からの呼び出しに対する参加率も84%から65%へと大幅に低下しています。

 この他、参加者の守秘義務の問題などもあります。国は、こうした課題を改善するために今後も様々な取り組みをするでしょうが、司法への国民参加による理解と信頼の向上という趣旨が本当に実現されるかどうかは、今後の推移をより注意深く見守る必要があると思います。


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